HiGH&LOW THE 戦国 感想文

HiGH&LOW THE戦国、千秋楽おめでとうございました!毎週新宿遠征楽しい1ヶ月でした。
 
チャレンジとパワーの詰まったザ戦を歌舞伎町の思い出とともに私の記憶から消す……わけにはいかないので、演者とキャラクターに絞って感想などを書いていきたいと思います。過去ツイートと重なる部分もありますが公演中〜公演後に思ったことのまとめとして。
 

浦川翔平さん(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)のオタク
・宝塚は宙組を時々観るぐらい/身内にヅカオタがいる/瀬央さんと水美さんは生では初めまして
 
LDHと宝塚どちらも多少知っているという、おそらくザ戦の中で一番どうでもいい客だったと思いますが、勝手に楽しんでいました。
 

 

・須和国

 

黄斬

「この刀が作るのは100年の平和か、それとも一生の後悔か」

一番好きなキャラクターだし、一番変化が大きかった。開幕当初は掴みどころのない飄々としたイメージが強く、龍の呪いを受けてからは一転まさにハムレットのように狂気の深淵に囚われてしまった印象でしたが、公演後半にかけて強くて切れ者、頼れる須和国の大将が呪いに苛まれて戦えなくなってしまう、狂気よりも黄斬が誰にも見せなかった苦悩が取り巻くようなイメージが濃くなっていったように感じました。どっちも好き。
 
黄斬は仲間を守るため、龍の呪いを押し込めようともがきますが、戦いを望んでいないのも事実。尊武国に攻め込まれても悪作のために刀を抜けず、敗走して憔悴しきった顔で煙管をふかして心を落ち着けようとしている場面がすごくよかったです。もしかすると黄斬は吏希丸の下で参謀をやっているぐらいが幸せだったのかもしれませんが、頭が良くて強かったばかりに……(吏希丸で後述)
千秋楽の「この刀が作るのは100年の平和か」で切なげに刀を見つめ、「一生の後悔か」で吏希丸を見据えるのすっっっごく良かったです。無常〜!これもある意味でto be, or not to beなのかもなぁ、とも思います。「なあ吏希丸、頼むよ 頼むから!」には何度も泣かされました。
 
また座長としての片寄くんのバランス感覚や喋りスキルの高さが客の目線から見ても明らかで、カーテンコールを毎回安心して&楽しみに見ていられるのは大きかったです。
 
「なぜ戦うことを選ぶのか?」「生きてるからだ」のニュアンス、力強い時もあれば妙にスッキリした言い方をされてる時もあってそれが好きだったなあ。最後の「生きろテメェら!」にはは不本意に剣を取らざるを得なくなった黄斬の結末さえも内包していて、いいですよね。辛くても本意でなくても時代に流されたとしても、意志を持って人は生きていかなければいけない……
あと片寄信長も迫力があって好きでした すらっとした体躯に軽装で結った髪を振り乱し燃え盛る本能寺に消えていく信長、めちゃくちゃ良くないですか!?良い
主人公覚醒シーンの「退け!」って燃え上がりますよね。
 

吏希丸

「乱世の頂を見たい、それ以外に理由があるか?」
瀬央さんのことは紅ゆずるさんトップ時代に何度か映像で拝見してると思うんですがこんなにしっかり見たのは初めてでした。超美形!そして芝居がうまい!自然体で須和国のイケメンとして空間に溶け込んでいる。初日からいいなあ〜!と思っていたのですが、毎公演毎公演今ある表現に固執せずどんどんお芝居を変えていかれるのでずっと驚きっぱなしでした。
「乱世の頂が見たい、それ以外に理由があるか?」も序盤はさも当然だろと言うような調子でしたが徐々に黄斬の問いかけに動揺したようなお芝居になっていって(黄斬の方も「お前はなぜ天下を夢見る?」に意志を感じるようになった気がする)パワーバランスの変化を感じて好きでした。
一番好きなシーンは終盤、糜爛の手下を一掃した黄斬が吏希丸に追いつくところ。黄斬の声に振り向く前の吏希丸がギュッと眉根を寄せて辛そうな顔をしているのに気づいた時、吏希丸のことが大好きになりました。
国の主の血を引く吏希丸、先の内乱について「馬鹿な先代ども」と言っているように決して争いそのものを望んでいるわけではないのだと思います。
しかし国の再興と天下(その先の平和)にかける想いは人一倍で、そのためには親友の黄斬の気持ちや自分の命さえも顧みない。子供の頃に砂漠で迷子になっていることや、吏希丸の父でさえ「主の血を引く」だけであることから、須和の皆が物心ついた時には国は既に内乱でめちゃくちゃになっていたのだと思いますが、黄斬も吏希丸も(戒と颯斗も)、見たこともない「かつての緑豊かな須和国」を取り戻そうとしているのが切ないなと思います。吏希丸はその血筋ゆえに「バカな先代ども」と言いながらもやはり国を棄てることは絶対にできないのでしょうね。
国の再興を目指すなら主の血を引く吏希丸が旗印になった方が民も集まりやすい気がしますが、吏希丸があえて黄斬をトップに据えることに拘ったところに強い意志を感じます(先述、黄斬が強くて賢かったばっかりに……)。でも「初めてだな、お前より先を読んだのは」に少し黄斬に対する悔しさとしてやったり感を滲ませているような気もして、それがカッコいい。「儚」の「共に歩む君がいるよ 儚き人の夢 すれ違う時もある」で黄斬に手を伸ばしかけてやめる、あの切なさも2回目以降にすごくきいてくる!
 
吏希丸は物語開始当初は単に「優しすぎる黄斬に龍の力を授け、須和国の再興と天下を成し遂げるため」に糜爛と手を組んでいたのではないか?と思っているのですが、社の刀に宿る念のことは知らず、黄斬は悪作に呪われてしまった。そして幸か不幸か、黄斬が呪われなければ黄斬があれほどまでに争いに傷ついていたことも吏希丸は知らないままだったんじゃないかなと思います。黄斬に「あの時は戦うことが正しいと信じていた(が今は違う)」「戦がなければ殺すことなんてなかった、それでもお前はまだ戦をするっていうのか」と問われたことに対する答えと、黄斬を腑抜けにしてしまったことへの精算として「黄斬に自分を斬らせ、平和のために戦わせる」ことを選んだ……という理解を現時点ではしています。
結局形としては友である自分の夢を争いを望まない親友に自分の命ごと託して叶えさせようとしてるわけで、ひどい男だ!(悲喜こもごも)
片寄くんと瀬央さんのコンビはこのあたりも含め最後の最後までより正解を追求していらした印象でした。
 
あとは公演中の思い出として、一度E列3番に座って冒頭の吏希丸にガッツリ光のない大きな瞳で見下ろされて心臓が潰れるかと思いました。おそらく潤花ちゃんが座ってらしたのと同じあたりの席と伺ったのですが潤花ちゃんがキャッ!となる(カワイイ)のも分かりました……
 
またNO FEAR NO MOREの「掛け違えた昨日がほどけていくように」のところの首の角度に宝塚の美学を感じました。
それから歌!中盤の「見えていないその想い〜」のところ多分ザ戦で一番好きな歌唱シーンです。心地よい。
 

「なあ兄弟!敵の数は?」
衣装から見える上腕がかっこいい!「うんこ座りの似合う悪党」なのに清潔感がある。うえきやさんはザワ→ポルステ以来かな?日替わりのプレゼントの替え歌では耳飾りが颯斗に貰ったものと判明してからずっとこいつら…めちゃくちゃ仲良いな…と思っています。颯斗を「兄弟」って言っちゃうのかわいいかわいい!
腑抜けた黄斬に対する対応がしっかりしてくれと言う戒と気遣わずにいられない颯斗で少し違うところも良い。乱暴だけど憎めない、大雑把だけどやさしい……いいなぁ。
戒が慌てるのもそれだけの黄斬の能力の高さと国の不安定さによるもので、彼自身も呪いをなんとかしてやりたいとは思ってるんですよね。公演終盤にかけて吏希丸と戒と颯斗が三バカトリオになっていってるのかわいかった吏希丸死ぬんじゃないよ
 

颯斗

「待ってるからな」
小野塚くんは特オタだったころからの縁なので嬉しい。
相変わらず息をするように舞台上で生きていられる人だな〜と感じる立ち振る舞いで、それがすごく安心しました。
雨乞いのシーンでどんどん頭に増えていく旗、1ヶ月分の日替わり、でっかい生意気な後輩の躾、全部楽しみでした。
「由緒正しい祈祷師の家系」で社の伝説にも詳しい(社の関係者?)なのに元盗賊なのはやはり内乱の関係なんでしょうか。
戦場で攫われた戒を必死に探してるのかっこいい〜。好き〜。
 

・乃伎国

湧水様

「我が従うは、愛!」
みんな大好きマイティー、という認識だけがありました。
ラスト3日間あたりが特に雄々しくかっこよかった。前楽か前前楽かで「弦流ー!」の慟哭を目を見開いて前を見つめたままやっていたのがすごく好きでした。須和国のふたりがよりよい解釈を追求するなら、この2人はその日それぞれの二人の関係をセッションしていらした印象。
 
殺陣も美しい!納刀したままでの殺陣は棒術に近いのかな?と思いますが力強くも流麗で、また黄斬とのやり取りの前に刀を一度振ってから黄斬に突きつける動作、片足を階段の上段にかけたシルエット、あのシーンの全部がかっこよくて見惚れてしまいました。
歌の方も流石というか、遠慮なく芝居をしながら歌う方だな〜!と思いました。「何たる者」の「刹那な時に微睡む」を歌い上げず儚く抜いて歌うのがすごく好きだった。
 
湧水様と弦流の気持ちが完全に同じ種類の愛であったかどうかは分からないなーと思っているのですが、少なくとも湧水様が神洲崎でなくただの「湧水」であれば弦流の気持ちを受け入れる準備はできていたんだろうなあとも思います。
弦流とは少し年の差がありそうなので、弦流に対しては弟ではないですが、かわいい弦流を慈愛によって守りたいと思っていた部分もあったのかもしれないなー。
「もういい、喋るな」と笑顔を作って弦流の前髪を払い、肩を指で撫でさする仕草に慈しみのようなものを感じた。自分を好いてくれているのは分かっているし、自分も愛おしくは思っているが、その想いには応えられないので彼なりに国を守ることで弦流を守ろうとした…でも一方で時々素をさらけ出して甘えてみたりもするんですよね… 弦流に「〜乃伎国の勝利は確実だ。だがしかし…」と言われた時の「ん?」がすごく優しくて、湧水様のあたたかさと弦流への愛情を感じていました。
でも弦流が龍の力に手を出すほど切実な想いを持っていたとは知らなかったんですよね湧水様。湧水様は最後まで弦流の恋心以外の動機が「自分を神洲崎の宿命と責務から解放したかった」だったことは知らないはず、だから最後の「我が従うは愛」は純粋な弦流への愛情、彼への弔いになるんでしょうか。
このオチ、全体を通して見てもすごく胸がすく感じで大好きです。
 

弦流

「始まる前に終わる恋とはこのことか……さて、どうやって収めようか!」
涙を拭う布を渡す時に手が触れる、その少しの緊張に恋心を感じとった初日の記憶があります。樹くんはずっとそうですけどますます瞳のお芝居がすごいですね!「友として」湧水に請われたときにすこし虚をつかれたように瞳が揺らめいて、でもすぐに「友としての弦流」の顔を作り直す、しかしその友としての気遣いも受け入れては貰えず立ち尽くす、一連の心の動きが繊細で大好きでした。友として、と言われて少しショックを受けて、ショックを受けたこと自体にも少し落胆して……恋ですよね。
死の間際でも(素?)「湧水様」と呼んだのに、糜爛の前では「湧水」と呼び捨てにしているところに少しのイキリを感じてかわいい。
弦流は強くて優秀で有能なのに、湧水様のことになるとコロッと糜爛の口車に乗せられてしまう愚直なまでの愛がかわいいですよね湧水様もそう思いませんか?
あと最期の大立ち回りがもう言葉はいらないぐらいすごい気迫で、弦流という男、また藤原樹という役者の命のきらめきを感じました。
 
儚く健気ですが、基本的に湧水様のことを守りたいと思っていて、叶わないなら世界ごと作り変えようとする狂気もあるし、最後に恋心の落とし所として怪物じみた大暴れをするしなんだかんだ尊武国の男でもあるなあ…と思います。
自分の赤い血に染まっていくライトの中でたった一つ残った青い光、あれは弦流の目に最後に映る世界、湧水様その人だったのかもしれないと思っています。
 
 

稲清水鉄湯

「やはり己の私利私欲のためかっ!」
公演中の癒し、ヘタレでかわいい鉄湯ちゃま…ですが、私は白銀の右脇腹に一撃加えたのは彼だと思っています。
湧水様に命じられ「玄武殿にお伝えしたいことがある」と白銀に叫んだ稲清水が「ここは戦場だ、これで語り合うしかないだろ!」と言われて刀を交えながらハケたあと、次に白銀が登場するのは脇腹を負傷して玄武殿に戦の真実を伝える場面なので、この間に鉄湯が白銀に一撃加えて話を聞いてもらったのではないか?だとすると手負いの状態で大勢の糜爛の手下を相手できる戦闘民族の白銀に無傷で一本取っている……足が震えているのに湧水様のために戦場を右へ左へ駆けずり回ってなおも無傷……ということを考えるとめちゃくちゃ強いかめちゃくちゃ運がいいか、どっちもかですよね。白銀のこと助けてくれてありがとう🎶
エンディングの日替わりで颯斗の腹パンを受けて「全然効いてないよー🎶」とおしりを振っていた時のことが忘れられません。一家にひとり飼いたい、稲清水鉄湯ちゃま。
 

・尊武国

玄武殿

「よく生き長らえた!」
りくさんと翔平さんはなんというか、お互いに信頼関係ってやっぱりあるんだな〜という空気を感じました。
とにかく殺陣がかっこよかった。しなやかでパワフルな野生の虎のような体躯、そこから繰り出される圧倒的な強さ。布の少ない衣装でも他の対象2人より明らかに体格がよく、マッチョだらけの尊武国の中でもそこにいるだけでこれが大将だとわかる説得力。
白銀が「玄武殿!」と呼ぶのを聞いた乃伎国と須和国の兵士が玄武…!?と怯むのが好きでした。首を斬りつけられても死なないし、敵の刀の刀身を素手で掴んだりもする、無茶苦茶!修羅の頂へ♪で兵を斬り捨てるところもいい。
人格は呪い以前から破綻しきっていますが、有無を言わさずカッコイイ。自分を慕って進言した部下を八つ当たりでぶん殴るありえなさ。聞いてるとマジか!?と笑えてくるほどありえないセリフがポンポン飛び出して気持ちいい。つまり全員ぶった斬れば仇は取れるってわけだ…マジ!?
 
影森様に依存しながらも影森様亡き後すぐに影森様の言いつけを破ろうとするあたりのどうしようもなさも好き。
この人もある意味力ある故に生き残ってしまった(長い孤独を抱えることになった)と捉えられる人だけど、黄斬と違って力ある故に良い保護者と良い部下に出会えましたね。
強い孤独を抱え、弱さを指摘されるキャラクターだけど、白銀の言葉あって解いた呪いを「造作もない」と最後まで強がり通してるのがかなり好きです。
影森様はこの怪物を人里に降ろした人、白銀はそれをもう一度人間に戻した人、というイメージ。
宴も好きだしエンディングを見ていると割と冗談も好きそう。賑やかなのが好きなのでしょうか。エンディング後も短気で乱暴なのは変わらないと思っているのですが、今まで人と信じあえなかった分、少しずつ愛し愛され国を愛することを知ってここから立派な城主になれるとも思います。続編に期待。
 

白銀

「そんな刀で死ぬかよ、尊武国を舐めるな!」
もう最高〜だった〜!みんなもそう思うよね〜?!こんな役をあててくれたノリさんも最高〜!HAPPY〜!
初日「強さとはなんだ!」と叫ぶ彼を見て大泣きしました。私は翔平さんが舞台上でそういう風に言葉を放つところが見たかったんだよー!と思った。翔平さんのお芝居の素直さというか、真っ直ぐに心に入ってくる言葉の発し方や感情表現がこれまでずっと(2020年2月から)いいなと思っていて、それが今回さらにレベルアップしていたし、グッと引き立つ役柄と演出だったなと思っています。稽古で周りの方の協力を得ながら、助言を糧にして作っていったというところも含め。
あとキャラデザがめちゃくちゃいいですよね上裸にオーバーサイズの革ジャンとパンツ 小柄さと身軽さを引き立てるサイズ感 胸のあれは動き回ってもジャケットがめくれないようにするベルトだと思うんですが、それもカッコよく落とし込んであって有村先生本当に素敵なデザインをありがとうございます。あと表情によって三白眼になったり黒目がちになったりするのもすごくいい。髪質がちょっと硬そうでボサッとしてるのも可愛い。
殺陣も流石の俊敏さで、格闘と剣術を組み合わせた動きが見ていて面白いしカッコイイよー小柄だからか打ち合った後に体重も使って押し込んでいたり、ダメージの蓄積が動きの鈍り方や体のかばい方にあらわれてて、「生きている」…と思いました。
BANG OUT〜INFERNOのクールさの中に燃え盛る炎を感じさせる眼差しと声も良かった。2階席から見る「舞台花で歌舞こうか」のよさ。
 
本編のほとんどを玄武殿を追いかけることに使っている白銀ですが、彼の個人的な人となりを示す台詞は「天下を治め、尊武国の誇りを全国に広めたい」「ここは戦場だ、これで語り合うしかないだろ」「そんな刀で死ぬかよ、尊武国を舐めるな!」あたりだと思っています。
また、彼はほとんど「自分」を主体にせず、「国」か「自分たち」の立場で話している。
真面目で、戦闘民族尊武国の中核産業である刀鍛冶の跡取り息子(長男っぽい…)として生まれ育った、自国とその文化に誇りを持つ戦士。玄武殿の情緒がうまく育っておらず幼いのもあり、全体としてやや大人寄りのキャラクターだなと感じました。
弦流は湧水様の為なら乃伎国を滅ぼすことも可能だけど、白銀はそれはしないしできないですよね。尊武国そのものくん。
玄武殿に対する「ここは退きましょう」が公演中すごく優しく諭すような言い方になった時期があって、これがめちゃくちゃ好きでした。最終的に必死さを強めに出した言い方になっていましたがそれももちろん事態の緊迫が伝わって良かったと思います。あと「勝利!」「天下!」の合唱の中でやりきれない痛ましそうな表情をしてる白銀も本当にいい。メロメロメロメロ
 
ただ、そんな尊武国の男である白銀が終盤「あなたには死んでほしくないんです」と言っている。私はその一言が彼の行動理由の中でごく個人的な感情に一番近い台詞だったんじゃないかな〜と思っています。白銀が玄武殿を見捨てない理由のうち何割かは生い立ちに対する同情もありそう。
もちろんあの人格を前にしても捨てられないほどの強烈な憧れもあって、そもそも戦闘民族の国のメインストリームで育った白銀にとって「強さ、勝利」は貴いもの、という価値観があるのではないかと思います。だからこそ刀を振るい圧倒的な力で戦場を駆け抜ける玄武殿に惹かれた。
ここからは想像に過ぎませんが、刀鍛冶でありその家業に誇りを持っている白銀が「玄武殿に自分の作った刀を」でなく「玄武殿の下で戦いたい」と思った理由、圧倒的な強さの前に刀の出来不出来など大した意味をなさないという少しの絶望があったかもしれないなとも思うし、単に玄武殿が天下を取るビジョンが見えてしまったからそれを最前列で見届けたいという思いかもしれない。
また、白銀は玄武殿の危うさに元々気づいてはいたけど、影森様という大きな後ろ盾がいたからあのまま天下へ進んでも大丈夫だと思ってたんじゃないでしょうか。でも影森様を失い、誰の言うことも聞かない、誰も止められない、(龍の呪いで)自制もない、でこのままでは本当にいつか孤独に死んでしまう!と思ったからああなった。
輪郭の歌詞を改めて読むと玄武殿が「振り続ける止まらない雨は冷たくて寂しい」と歌ったあとに、白銀は「周りに降る雨は寂しさを洗い流す愛だ 気づいてるのに隠している」(大意)と歌っている。
あと別に玄武殿が「ひとりじゃない」ことに気づいてさえくれれば白銀としては自分でなくても良かったと思うんですよね。そこまでのガッツがあったのが白銀だっただけで。
 
追加で「白銀が誰から玄武殿の過去を聞いたのか」について(あの語り大好き千秋楽めちゃくちゃ良かったですね…それからはたったひとり、の置き方とか…)、公演期間中は完全に「影森様から聞いた」と思い込んでいたのですが、それにしては影森様と白銀のやり取りがお互い白々しく、白銀も玄武殿の心境を想像で語りすぎなような気がしていました。
これもひとつの空想にすぎませんが、もしかしたら白銀は何かのタイミングで(宴の席など?)玄武殿本人から影森様との出会いと「俺は影森様だけを信じている」「弱いお前らは黙って着いてくればいい」というようなことを直接聞かされていた可能性もあるかもしれないと千秋楽後に思い至りました。ただこのパターンでもあくまで玄武殿はそういう話をしたこともその相手が白銀だったことも記憶していないと思う。それぐらいの関係なのがいいなと思います。
 
個人的にはザ戦2でまた白銀と鉄湯の絡みが見られたら嬉しいな!
 

影森様

「なるほど、ですがまだその時ではありません」

影森様、序盤は神職というか、泰然とかなり高い位置におられたような印象なのですが途中から玄武殿に対してより教育的な立場になると同時に温かさも強くなった気がします。
影森様は白銀に「玄武の力に惚れ込んでいるのか」と聞きながら、白銀の述懐の途中からずっと玄武殿を見ているんですよね。言葉以上に玄武殿に対しては思うところがあったのかも、とか昔は玄武殿みたいに荒れていて自分と重ねる部分があったのかも、とか色々考えましたが真相はどうなんでしょう。尊武国の血気盛んなマッチョを多数抱えて皆から敬われているのある意味恐ろしい。
あとは玄武殿が白銀を助ける例のシーンで斬られるのが冨田さんである意味については玄武殿自身の影森様への依存/「俺にはあなたしかいない」という思い込みによる孤独/喪失を乗り越える、という意味での「弱き己に打ち勝つ」象徴なのではないか、ストレートな親父越え/親父殺しともまた違うけれど、広義の自立の意味があるんではないかな〜と思っています。

↑この糜爛の手下さん、「んぁー!尊武国の下っ端かぁー!」がどんどんイヤな感じになっていくのが大好きでした。これが嫌であればあるほど白銀も手下も輝く、お芝居って良いな〜!
 

・そのほか

糜爛様

「人間50年、天から与えられたのは途方もない時間だけだ」

終盤にかけて遊び心が増していってどんどん素敵な悪の華になっていかれましたね。悪役レスラーのような衣装とマント捌きと顔の傷が大変好きでした。美しさは乃伎国の男の特徴…
糜爛様、吏希丸のことは「最後までわからん」と言っていた一方で弦流のことはからかって怒らせて遊んでいたのも好きです。糜爛様、我が従うは何と言おうとしたんでしょうか。人を傷つけ憎み合わせる方法を取ったのは事実ですが、人生に空虚さを感じているであろうところには悲しさも感じます。
鼻が悪いのか通路横でも演者の香りをあまり感じることがないのですが、ザ戦中1回だけ、糜爛様が隣を通った後にすごく甘い匂いがしてドキッとしました。あれ糜爛様の香りだったのかな〜。
 
 
終わり
38公演お疲れ様でした。